◆ 治療の手順 

問 診
直接の症状以外にも全身の状況や既往症について質問します。
着替 治療着に着替えていただきます。
触 診
触診とは手の平で触って診察することです。手足や腹の皮膚の状態、患部の状態、などを診ます。
腹で全身のバランスを診察する事を腹診と言います。、
脉 診
仰向けになって戴いて両手の手首にある動脈の拍動を診ます。(下の脉診Q&A参照)
証決定
以上の診察により診断を下します。経絡治療では「証を決定する」と言います。同時にここで治療法を決めます。
本治法
全身の調整を行ないます。痛いところが腰や肩であってもまずは手と足のツボを治療点とします。
標治法
体に現れる異常所見を治療点とします。凝ったり痛いところには皮膚が硬くなったりあるいは力なく虚弱であったりします。その部分をはりや灸で正常な健康状態にしていきます。
治療の確認

脈が健康になっているかどうかを再度、脉診して確認します。また腹があたたまりふかふかになったか、皮膚に艶(つや)が出てきたか、などを確認します。

治療日の注意
治療した当日は激しい動きや熱い風呂、あるいはアルコールの多飲は避けていただきます。
このような内容の問診を行っています。クリックして下さい。→問診表

 


脉診Q&A

Q 脉診で何がわかるのでしょう?

A 昔は医者にかかることを「脈を診てもらう」と言いました。現在のように発達した検査機械がない時代の医者は顔色や声の調子や肌の艶や脈を診るなどして診察していました。その中でも脉診はもっとも決め手となっていたのです。これらの診察により患者の病気を診断し、治療法を決定し、どれくらいで治るかの予後を判定するという作業を行なっていたのです。

Q 西洋医学の病院でも脈を診ますがどう違うのですか?

A 病院で脈を診るのは脈が1分に何拍打つか脈の速さを計っているだけです。東洋医学では「脈状診(みゃくじょうしん)」といって脈の速さだけでなく脈が浮いているか、沈んでいるか、力があるかないか、など診ます。「脈状診」によって病体を把握(はあく)し鍼の刺し方を決めます。たとえば脈が浮いて早く打つ力がない時には細い鍼を使い、深く刺入せず速やかに抜く、というようになります。鍼の刺し方を「手法」、刺激量を「ドーゼ」と言います。病体によって「手法」や「ドーゼ」を変えるということです。

Q 病院では手首の一箇所を見るだけですが東洋医学では両手の手首を先生の両手を使って診ていますね。どう違うのですか?

A これは大変大切なことです。右の図にあるように手首にある橈骨動脈(とうこちどうみゃく)の5cmくらいの幅のなかに左右3箇所ずつの脈を診るポイントがあります。それぞれのポイントに心(しん)とか肝(かん)とかありますね。このように6つのポイントの脈がどのように打つかを診ることで体全体のバランスを診ることができます。これを比較脉診(ひかくみゃくしん)と言います。

Q 心とか肝とかいうのは心臓や肝臓を意味するのですか?

A いいえ。かならずしもそうではありません。下の表にあるように現在の解剖学で解明された各臓器の働きと似通っているものもありますが異なるものもあります。

Q 現代医学の臓器の考え方とかなり異なるものもありますね。東洋医学が科学的でない、という批判もありますが。

治療効果という結果から判断するということではないでしょうか。これらは東洋医学の基礎理念であって、ここから治療体系が作られ、立派な治療効果を生んでいるのです。

Q そうですね。進んでいるはずの西洋医学では治せないものが東洋医学で治るのですから。

脉診にもどります。これらの臓の働き具合が脈を診て解るという事ですね。

A そうです。正確に言えば経絡(けいらく)の働き具合を脉診で診るわけです。肝経(かんけい)、心経(しんけい)、脾経(ひけい)、肺経(はいけい)、腎経(じんけい)と呼びます。経絡とは自分の受け持ちの各臓器や器管などの栄養、新陳代謝、生長など一切を補償します。ですから経絡の働きが弱ると受け持ちの区域に影響し、受け持ち区域の異変に経絡が反応します。

Q では比較脉診はどこが悪いかを診察するためのものなのですね。

それだけではありません。比較脉診は診察、診断すると同時にどこのツボにどのような手法で治療するれば良いのかを教えてくれます。この事はまた機会があれば詳しくお話します。ここで言いたいのは病気の原因が解っても治療法がない西洋医学とは異なり、病名が付かなくても経絡の働きの変動が解れば即、治療出来るのが東洋医学の経絡治療だということなのです。


■ 各臓の働き

肝臓
肝臓は「血(けつ)を蔵(ぞう)する所」で血の不足の病に大切な臓器とされている。筋肉の腱や爪を養う。意志や感情を支配する働きを有する。肝の働きが減退するとくよくよ取り越し苦労をし、不眠、不安、気力減退をきたし意志力が弱くなる。異常亢進すれば感情が高ぶり怒りっぽくなり大きい声でどなる。房事の亢進作用、眼や視力の強弱にも関係する。肝臓の働きの変動により眩暈(めまい)、生殖器病、腰痛、神経症、脱腸、解毒に関する皮膚病などを起こす。
心臓
心臓はこころの蔵する臓器とされる。知覚作用、思考作用に関係する。また心臓は血を生成する所とされる。
脾臓
西洋医学のすい臓を中心とした消化臓器群。唇、肌肉(きにく)、乳に関係する。全身が痩せたり肥ったりは脾臓の支配するところである。脾臓の働きに変動があると身体が重く、疲れ易く、食欲がなくなる。腹痛、便秘、膝痛など関節痛、むくみ等に関係する。
肺臓
肺臓は鼻、気管、肺の呼吸器群である。諸々の臓器に生じた濁った気は肺臓を通してきれいな気と交換される。皮膚を養うとされる。肺臓の働きに変動があると呼吸器病や神経症、皮膚病を起こす。肩こり上気にも関係する。
腎臓
父母の宿した精が子供の腎臓に宿っているとされる。腎は生命の根源とされ、肝とともに子孫を作る作用がある。また腎は水臓(すいぞう)と言われ身体の水分代謝を支配するので利尿、むくみ等に関係する。耳、骨、髪に関係する。腎臓の働きに変動があるとのぼせ、肩こり、足の冷え、など逆気症(ぎゃっきしょう)を起こす。更年期障害にも関係する。骨を損なう腰痛も腎に関係する。
心包 心臓の一部であるが心臓の機能を代行する。


腹診とは?Q&A

こちらの治療院ではお腹を触って診察していますね。

Aそうです。脉診と同じように治療の前に、お腹を触って診察し、治療の途中や最後にもお腹を診ます。腹診は中国の漢の時代の「難経(なんぎょう)」に書かれています。脉診と同じように五臓の虚実を診断します。五臓については上の表の通りです。虚とは生気が不足した状態を言い、実とは生気の働きを妨害する邪気が充満した状態を言います。

そうすると脉診と腹診は同じように体全体のバランスを診るわけですね。

Aそうです。脉診と腹診は一体のものです。

どのようにして診るのでしょう。

A右の図が五臓といわれる各臓の診断場所です。比較して最も虚的なところが本証になります。例えば肺の診所が最も虚の場合は肺虚証です。

腹診で虚と診るのは具体的には?

Aそーっと腹の皮膚の表面に手をすべらせると、ややくぼんで張りと艶と弾力のない状態を言います。湿った感じやざらついた感じもそうです。

それでは実的というのは?

A実を診る時には皮膚の表面だけでなく、少し圧して深いところを診ます。深いところに硬いものが触れ患者が不快感や痛みを感じるのが実です。

病院の医者も腹を圧して診察していますがそれとは違うのですか?

A西洋医学の腹診は主に臓器診と言って現にある臓器を皮膚面を圧して診るものです。経絡治療の腹診とは全く異なるものです。

鍼をすると腹がどのように変るのですか?

A正しく鍼をするとくぼんで張りと艶のない部分がふっくらとして艶が出てきます。まるで蒸し器に入れた蒸かしたてのまんじゅうのようになります。あるいは、深いところにある硬いものがとれゆるやかなお腹になります。

それは素人にも解かる変化でしょうか?

Aそうですね。経験ある治療家の触覚により診断できるものですが、脉診に比べると客観的にも変化が解り易いです。付き添いの家族の方が見ても解かる場合が多々あります。関心のある方はどうぞ診察室でご家族の治療をご覧になって結構ですよ。

脉診Q&A
各臓の動き
腹診とはQ&A
   針灸大成図譜より臓腑図
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