Q 脉診で何がわかるのでしょう?
A 昔は医者にかかることを「脈を診てもらう」と言いました。現在のように発達した検査機械がない時代の医者は顔色や声の調子や肌の艶や脈を診るなどして診察していました。その中でも脉診はもっとも決め手となっていたのです。これらの診察により患者の病気を診断し、治療法を決定し、どれくらいで治るかの予後を判定するという作業を行なっていたのです。
Q 西洋医学の病院でも脈を診ますがどう違うのですか?
A 病院で脈を診るのは脈が1分に何拍打つか脈の速さを計っているだけです。東洋医学では「脈状診(みゃくじょうしん)」といって脈の速さだけでなく脈が浮いているか、沈んでいるか、力があるかないか、など診ます。「脈状診」によって病体を把握(はあく)し鍼の刺し方を決めます。たとえば脈が浮いて早く打つ力がない時には細い鍼を使い、深く刺入せず速やかに抜く、というようになります。鍼の刺し方を「手法」、刺激量を「ドーゼ」と言います。病体によって「手法」や「ドーゼ」を変えるということです。
Q 病院では手首の一箇所を見るだけですが東洋医学では両手の手首を先生の両手を使って診ていますね。どう違うのですか?
A これは大変大切なことです。右の図にあるように手首にある橈骨動脈(とうこちどうみゃく)の5cmくらいの幅のなかに左右3箇所ずつの脈を診るポイントがあります。それぞれのポイントに心(しん)とか肝(かん)とかありますね。このように6つのポイントの脈がどのように打つかを診ることで体全体のバランスを診ることができます。これを比較脉診(ひかくみゃくしん)と言います。
Q 心とか肝とかいうのは心臓や肝臓を意味するのですか?
A いいえ。かならずしもそうではありません。下の表にあるように現在の解剖学で解明された各臓器の働きと似通っているものもありますが異なるものもあります。
Q 現代医学の臓器の考え方とかなり異なるものもありますね。東洋医学が科学的でない、という批判もありますが。
A 治療効果という結果から判断するということではないでしょうか。これらは東洋医学の基礎理念であって、ここから治療体系が作られ、立派な治療効果を生んでいるのです。
Q そうですね。進んでいるはずの西洋医学では治せないものが東洋医学で治るのですから。
脉診にもどります。これらの臓の働き具合が脈を診て解るという事ですね。
A そうです。正確に言えば経絡(けいらく)の働き具合を脉診で診るわけです。肝経(かんけい)、心経(しんけい)、脾経(ひけい)、肺経(はいけい)、腎経(じんけい)と呼びます。経絡とは自分の受け持ちの各臓器や器管などの栄養、新陳代謝、生長など一切を補償します。ですから経絡の働きが弱ると受け持ちの区域に影響し、受け持ち区域の異変に経絡が反応します。
Q では比較脉診はどこが悪いかを診察するためのものなのですね。
A それだけではありません。比較脉診は診察、診断すると同時にどこのツボにどのような手法で治療するれば良いのかを教えてくれます。この事はまた機会があれば詳しくお話します。ここで言いたいのは病気の原因が解っても治療法がない西洋医学とは異なり、病名が付かなくても経絡の働きの変動が解れば即、治療出来るのが東洋医学の経絡治療だということなのです。