治療例 歯茎の腫れ
60代の男性が歯茎(はぐき)の腫れを訴えて来院しました。左の 歯茎が数日前から痛み出し、まるで頬に大きなコブができたように腫れて熱をもっています。全身を診察しますと顔面からはるか離れた左膝から下の足の前面が固く盛り上がっています。

 左の図を見て下さい。これは中国の明(みん)の時代、1601年に書かれた「針灸大成図譜しんきゅうたいせいずふ)」です。全部で14経ある経絡のうちの「胃経(いけい)」の図です。胃経は顔面から胸部、腹部を通って大腿(だいたい)から膝の下の下腿(かたい)を流れ最後は足の第2指の先に終わっています。このように顔面と足とが同じ経絡の流れでつながっていることを図で示しているわけです。昔、痛みや熱を抑える薬や注射が発達していない時代には歯痛や歯茎の腫れは命取りになりかねなかったと推測されます。家族や一族の者が苦しんでいるのを見て「なんとかしよう」と必死になった研究熱心な者達が顔面に炎症が生じる時には足の前面にいつもと違う盛り上がりがあるのを発見したと思われます。「それでは足の盛り上がりを治すことで顔面の炎症が治らないものだろうか」と試行錯誤(しこうさくご)の臨床を重ねたと思われます。

の男性患者には本治法(ほんちほう)で全身の調整をした後、左の膝下にある足三里(あしさんり)というツボの下の硬結(こうけつ)に鍼を入れ軽く抜き刺しする手法を施しました。するとなんとなく頬の腫れが引いてきました。次に足の第2指の爪の際に太めの鍼をしてその後を摘むと小さな血が一滴出てきました。そのとたんに今までの痛みと腫れが嘘のように引いてきたのです。患者には「翌日になってまだ腫れているようなら歯医者に行って炎症を抑えて大事のないように」と念を押しました。しかし翌日は症状が緩和(かんわ)していたので結局、歯医者にいかないままで治ってしまいました。

 の治療例からしても古代中国の漢(かん)代に集大成された「経絡治療」は現在でも有効な治療法です。部分だけを治療して元は治せない西洋医学とは異なり全身を診て全身を調整し、局所の治療が出来るのです。

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